金色の猫 |
街から姿を消してしまっていた猫が、草原をかけまわっているのを見つける。でも猫はわたしのことを憶えていない。大草原で突如人間に出くわしたキツネのように、立ち止り、好奇心半分、首を長くして一旦目をこちらに合わせたが、やがてまた何処かに向かって走り出した。
振り向いた時、猫の眼はかつてよりも穏やかであし取りも若い猫のように軽やかだった。現に、目の前のその猫の姿は明らかに若返っていた。どうやら、わたしがその猫に逢う以前まで時間を溯って来ているらしかった。太陽の光が草原と猫の姿をつつみ込む。その光景は眩くばかり輝いてやがて金色に溶けてなくなった。