空飛ぶ家

広い、緩やかなのぼり坂になっている草原を歩いていた。原っぱのあたりに見当たるようなものが何もない真ん中まで来てみると、前方の空に、建売広告にあるそうな二階建ての家が飛んでいるのが見える。それは辺りを回転しながら漂っていた。物干しには様々な色の洗濯物のシャツが並んで揺れていた。あの物体がこちらに近づいて来ないことを思うと、その願いをあざ笑うかのようにそれはこちらの方へと近づいて来た。そして遂にはそれが頭上までやって来たので、わたしはその場に座り込んでしまった。飛行する家はわたしの真上でぴたりと静止した。わたしはその家がそのまま降って来ることやら何か悪いことを想像し、必死でその位置から離れようとするが、ちっとも身体が動かない。やっとのことでその場から離れると、その家もあっけなく方向を変えて何処かへ飛んで行ってしまった。上空を見ると、着いて行きそびれた何枚かの洗濯物のシャツが取り残されてゆらゆらと浮かんでいた。 (9/17/00)


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