異国にて

飛行中の機内で、さっきまで空港の待合いで一緒だったひとりの男が下の方を指して「空港に取り残された人がひとりいたね」と云った。

異国の都市にいる。一緒に来ていた同僚と街を彷徨っている。歩きながら私は、都会の風景は何処も少し似ているところがあると思う。雨上がりの石畳に灯り始めた店のネオンが反射するのを見ているうちに、半日前に日本で見ていた空港の待合いカフェや、夜の街灯りを思い出していた。

時刻は朝のようだった。同僚とわたしはここから会議へ向かう上司を見送るため、巨大な建物の前で待機していた。グッゲンハイム美術館に似ているが、刳り貫かれただけの四角い入口の向こうは真っ暗闇だった。やがて上司が向こうからやって来ると、軽く手を上げ、笑顔でその真っ暗な暗闇の中へと消えて行った。 (10/4/00)


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