木星の欠片

まるで焼け落ちた跡のような瓦礫だらけの街を歩いていた。街角には家に帰りそびれてしまったように、ただ佇んでいる人々がいる。それは錆びれた風景だったが満天にちらちらと輝くものはとても美しかった。ふと、足元に目をやると十センチ程の厚さの本が落ちている。拾い上げて見ると、なかには素敵な言葉が驚く程たくさん書かれていた。わたしはこれを持ち帰りたいと思ったが、雨にあたったのか本は水気を含んでいて表も裏も表紙がくたびれていた。ほんの少し迷ってから、わたしは両側の表紙だけ破り捨てると、本の中身を持って再び歩きだした。小脇に抱えられた本はそれでもなお水分を含んでいるように重かった。(11/16/00)


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