螺子と引き出し

夕暮れ時、近所の通りを歩いていると、電信柱に貼られたポスターの中に小さなトラがいた。トラが何やら口を動かすと、鋭い歯が剥き出しにり、そのうち一本がポロリと地面にこぼれ落ちた。近くにいってよく見ると、落ちた歯は鼠色のネジだった。

通りの先に、ある女優が暮らす住まいがある。その場所を訪れると、女優はわたしを彼女の大きな屋敷へと招きいれると、ひっきりなしに話をした。話ながら彼女は玄関前においてある引き出しが沢山ついた大きなシェルフをしきりに開けたり閉めたりした。見ていると、それら引き出しはどれにも底がなく、開いた穴の向こうに別の部屋の風景が見えるのだった。というのも、それら大きな引き出しは、どうやらそれぞれの部屋へと続く扉の役目を果たしていたのだ。(11/19/00)


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