ルームメイト

新しいルームメイトと夜道を歩いている。夜の街は光の森だ。ヘッドライトがアスファルトの上を乱反射し、警視庁前で突然焚かれたカメラ・フラッシュに私達の目線はしばし奪われる。

私達は今度住むことになった部屋へ向かっていた。大通りに沿って街の中心を流れる運河が見渡せたら、私達はもうアパートメントに程近いはずだった。けれども彼女はタクシーを拾うおうとしている。タクシードライバーが我々の方へ向かってくると、道の前に中年女性の集団が立ちふさがった。ドライバーはすぐに諦めて別の路地の方へ流れて行ってしまった。すると突然、突拍子もなく女達の一人が私達に謎賭けを投げかけた。あてずっぽうに応えると、運よく答えがあっていた。女は喜んで、塞いでいた道を開けてくれた。

水門に似たゲートを潜った。私達は赤を基調とした料理店に立ち寄り、メニューにある料理を頼んだが、「それはできません」と言われる。

やっと螺旋階段が特徴的な私達の新しいアパートメントへと到着した。いよいよ部屋へ入ろうとする時になって、ルームメイトが部屋の鍵を忘れたと言い出し、ひとりで来た道を戻って行く。彼女が戻るのを待っていると、ひとりの男が立ち寄った。不思議なことに、彼は私達の部屋の鍵を持っていて、遠慮なしに鍵を開けた。それから彼は、実は彼自身も私達の新しいルームメイトなのだと言った。
(4/11/01)


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