橋から落ちる少年

橋の上から大きな川を見ていた。空は今にも泣き出しそうな厚い雲で覆われている。急に、何処からともなく自転車に乗った少年が近づいて来きたかと思うと、その少年はふっと自転車の前車輪持ち上げ、そのまま下の川へ落下して行ってしまった。下の方から"ごつり"という鈍い音がしたので、わたしは助けを求めようと辺りに向かって声を出してみた。大声を出しているつもりが、その声はどこへも響いて届かず口先で消えてなくなる。けれどもそれからすぐに、運良く一人の警察官が現れて少年を見つけると、棒のようなものを使って少年の身体を岸へと引き寄せ始めた。川波が線を描いて少年の顔の上に影をつくり、薄い水膜が輝いている。(11/12/01)


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