夜景画

桟橋のデッキで夜風を楽しむ人々に紛れて海を眺めていた。沖合いのそう遠くない所に、停泊する船のちりばめる宝石のような灯がチラチラと揺れている。

桟橋を通り抜け、連結する建物の階下へと降りた。ひと気のない廊下は緩やかな下り坂を描いて、私をこまねいていた。その先に開け放たれた扉がひとつ、群青色の夜空と海を映し出している。 さっきデッキからみた船がさらに間近に迫っている。わたしは浜辺を幾人かの人影が歩き回っているのを見た。時折高くあがる白い飛沫は何か警戒を表しているかのようだったが、構わず一人の女性が波間の方へと向かっていく。案の定、彼女は一瞬にして波に足をすくわれてしまった。

地下室の奥は、船の展示室になっていた。代々地元の港に関わってきた船の大型模型が展示されているが、誰も見る者はない。ただ、雰囲気のある廊下で若いカップルと一人の青年が木にとまって眠る鳥のようにひっそりとたたずんでいる。 (10/29/04)


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